ひとつの商品が生まれるまでには、完成した姿からは見えない、いくつもの過程があります。
アイデアが生まれ、形を探り、試作を重ね、ときには少し遠回りをしながら、ひとつのプロダクトへと仕上がっていく。
「Inside the Factory」では、そんな鹿島アントラーズのものづくりの裏側を紹介します。
ひとつの商品が生まれるまでには、完成した姿からは見えない、いくつもの過程があります。
アイデアが生まれ、形を探り、試作を重ね、ときには少し遠回りをしながら、ひとつのプロダクトへと仕上がっていく。
「Inside the Factory」では、そんな鹿島アントラーズのものづくりの裏側を紹介します。
すべての始まりは、その毛をほんの少し毟り取ったことでした。
採取した毛を研究施設へ持ち込み、培養を開始。
ここから、研究班による試行錯誤が始まります。
しかし、研究は最初から順調だったわけではありません。
培養条件を変え、方法を変え、それでもうまくいかない。
そのたびに研究班は、アントンからこっそりしっぽの毛を毟り取り、新たなサンプルを確保しながら実験を続けました。
回数を重ねたことで、今では研究班もすっかりしっぽの毛を毟るのが上手になりました。
アントン本人はもちろんのこと、お世話係の目を盗んで背後から接近、電光石火の早業で毟り取り、素早く立ち去ります。
その動きは、まるでオフサイドラインぎりぎりで駆け引きを続けるフォワードのよう。
相手の視線と立ち位置を読み、絶妙なタイミングで背後を取る。あまりに際どいため、その成功が正当だったのかどうかは、VARが入らないと見極められません。
とはいえ、ひとつ問題があります。
あまり毟りすぎると、アントンのしっぽがハゲてしまうのです。
安定したサンプルの確保と、アントンの毛量を維持すること。その両立もまた、この研究における重要な課題のひとつでした。
失敗と観察を繰り返すなかで、少しずつ培養は安定。やがて研究室の中だけでは追いつかないほど増殖するようになり、より安定した生産を目指して、新たな環境での育成が始まります。
研究室での培養が安定し、次に課題となったのが「量産」です。
一定量をつくることには成功したものの、研究施設の限られた環境だけでは、生産できるしっぽの数にも限界があります。
より多く、より安定して育てる方法はないか。
研究班がたどり着いたのが、屋外での栽培でした。
いくつかの環境で生育試験を行った結果、しっぽは適度な日照と風通し、そして丁寧な管理によって、比較的安定して成長することが判明。
そこで、新たな研究拠点として選ばれたのが葡萄農園です。
葡萄を育てるために整えられた棚。十分な日光。一本一本の状態を確認しながら管理できる環境。それらの条件が、しっぽの育成にも適していました。
葡萄栽培では、ただ実がなるのを待つわけではありません。
枝や葉を整えて日当たりと風通しを確保し、必要に応じて房を間引き、残した葡萄に十分な栄養が行き渡るよう管理します。また、果実を鳥や動物からも守らなければなりません。
しっぽも、基本的な考え方は同じです。
毛並みの状態を確認しながら、一個体ずつ丁寧に管理する。収穫に適した状態になるまでじっくりと育てます。
葡萄農園で長年培われてきた栽培技術が、まさかアントンのしっぽの量産に活かされているのです。
そうした葡萄栽培の知見を取り入れながら、培養された小さなしっぽは農園へと移されることになりました。
日当たりや風通しを調整し、それぞれの状態を確認しながら成長を見守っていきます。
しばらくすると、葡萄の房に混じって、白く、もふもふとしたものが少しずつ姿を現し始めました。
最初はごくわずかだった個体も、環境に順応するにつれて安定して成長。やがて農園のあちこちで、十分に育ったしっぽが確認できるまでになりました。
こうして「あんとんのしっぽ」は、研究室の中で培養するものから、葡萄と同じように農園で育て、収穫するものへと変わっていったのです。
そして、ある日のこと。
いつものように収穫前の個体を確認していると、その中にひとつだけ、明らかに様子の違うしっぽが見つかります。
これまでより大きく、見慣れない長い部位を持った個体。
後に「あんとんのしっぽショルダーバッグ」となる、新たなしっぽの発見でした。
そして研究班は、この新たな個体が持つ可能性を、あらためて見つめ直しました。
ただ育てるだけではなく、ただ収穫するだけでもない。
このしっぽには、これまでの個体にはなかった、新しい役割があるのではないか。
農園で生まれ、育ち、見つけ出された特別なしっぽ。その個性をそのままに、もっと身近に、もっと自由に持ち歩くことができたなら。
そうしてたどり着いたひとつの答えが、あんとんのしっぽショルダーバッグ です。
アントンのしっぽらしい、ふわふわとした毛並み。
思わず目で追ってしまう、独特の存在感。
それらをそのまま残しながら、新たなかたちへと育ったしっぽ。
ショルダーバッグは、こうして生まれました。
研究は、ときに思いがけない発見を生みます。
一本の毛から始まった小さな研究は、研究所を飛び出し、葡萄畑へ。そして、持ち歩けるしっぽへとたどり着きました。
そんな少し不思議な「Inside the Factory」の世界を形にするうえで、力を貸してくださったのが鈴木ハーブ研究所と葡萄色(
鈴木ハーブ研究所は鹿島アントラーズのビジネスクラブの一員であり、アントラーズの日焼け止めクリームの生産も手がけています。一方、葡萄色(
それぞれの場所が持つ空気や景色も、この物語をつくる大切な一部になりました。
あんとんのしっぽ。
研究班の観察と試行錯誤の末に生まれた、少し不思議で、ちゃんとかわいい成果です。
さて、次は何を毟りに行きましょう?